【開催報告】第12回 量子固体Flagshipセミナー
2026年6月24日、第12回Q-LEAP量子固体Flagshipセミナーを開催いたしました。今回は、固体中の点欠陥を用いた量子技術研究の第一人者であるAdam Gali教授をお招きし、「固体中の点欠陥量子ビット」と題してご講演いただきました。当日は会場に約20名、オンラインで約50名、合計70名を超える方々にご参加いただき、盛況のうちに終了いたしました。
Gali教授は、固体中の点欠陥が量子ビット(Qubit)としていかに有望であるか、その基礎から最先端の応用までを包括的に解説されました。
講演では、まず古典ビットと量子ビットの物理的な違いを明確にした上で、固体中の点欠陥が量子情報処理の担い手として優れている点を論じました。特に、ダイヤモンド中のNVセンタをモデルケースとして、室温動作の実現可能性、スピンハミルトニアンの構造、そして光学的スピン分極と読み出しのメカニズムについて詳細な説明がありました。
また、理論物理学の観点から、グループ理論を用いた選択則の解析や、疑似ヤーン・テラー効果と電子-フォノン相互作用が、禁制遷移を可能にする重要な役割を果たしていることを理論的に解明した成果が示されました。
後半では、NVセンタが抱える表面近傍での性能劣化という課題に対し、代替材料として炭化ケイ素(SiC)の可能性が提示されました。SiC表面をアルカン鎖で終端処理することで、表面欠陥の影響を抑制し、表面から数ナノメートルの浅い位置でも安定した量子特性を維持できるという最新の研究成果は、参加者の大きな関心を集めました。
最後に、量子技術の研究が材料品質の向上をもたらし、それがパワーデバイス等の古典的デバイス産業の発展にも寄与するという、学術と産業の相乗効果について展望が語られました。


講演後の質疑応答では、参加者から理論的背景や実験手法に関する活発な質問が寄せられました。特に、SiC中の酸素空孔欠陥の同定や、スピン状態の寿命を制御する技術的アプローチについて議論が交わされ、非常に有意義な時間となりました。
本セミナーは、固体量子技術の基礎理論からデバイス応用までを俯瞰する貴重な機会となり、多くの研究者・学生にとって今後の研究の指針となる知見を得る場となりました。

